『昭和23年9月11日〜平成8年9月25日までの間に、旧優生保護法により生殖を不能にする優生手術または放射線照射を受けた方で、現在生存されている方を対象に、法に基づき一時金320万円(一律)を支給いたします。
請求期限:令和6年4月23日(つまりあと1年ちょっと)
周知用ポスター及びリーフレットを診療所内に掲示・設置を行うなど、制度の周知にご協力くださいますようお願いいたします。』 (厚生労働省作成資料より引用)
宮城県の保健福祉部子ども家庭支援課から、上記のご案内郵送物がくりにっくにも届きました。くりにっくとしてお役に立てるかわかりませんが、院内(とホームページ)にさっそく掲示いたしました。ただ、その記載に気になる点が…
放射線照射を受けた方という情報が、タイトルの「など」の部分で埋もれてしまっています。一時金対象者は手術を受けた方のみと誤解して、本文の小さな文字をよく読まないと気がつかない(というか、対象者はご高齢者が多いだろうし、読まない可能性が高い)方々もいらっしゃるのでは?ということが、個人的にとても危惧されます。このブログも文字が小さめ、かつ文字が多めなので、お読みにならないかもしれないのですが…
骨盤部への放射線治療で、卵巣や精巣、子宮など生殖器が照射されると、生殖機能が損なわれます。がん治療の場合、「本人の生存優先でやむなし」と言う理由で(手術や抗がん剤や)放射線治療が行われます。最近では、妊孕性(生殖機能)温存や内分泌(ホルモン)機能温存で、生殖器への被ばくを抑える選択肢が出てきていますが、いまだになかなか難しい場合が少なくありません。
しかし、旧優生保護法による当時の生殖不能照射は、被ばく者本人の身体を守るためという理由ではなく、優生思想に基づくもので、心身ともに多大な苦痛を与えるものでした。平成8年というと、私が本格的に放射線治療業務にたずさわった頃ですし、自分の子供たちもちょうどその頃にこの世に生を受けていますので、私にとって決して「昔」の事ではありません。
私自身、そのような生殖不能照射を依頼されたことは一度もありませんし、対応したこともありません。ただ、手術と違って、照射そのものは全身麻酔不要で手術に比べ「気軽に」行うことが可能なので、本人家族もよくわからないまま照射が行われた事例は当時少なくなかったかもしれません(推測で記載しておりますので、不適切な場合は即時修正いたします)。
もちろん、現在も行われているがん治療による生殖不能が損なわれる照射だって、ご本人が心身に多大な苦痛を受けることには変わりありません。少しでも早く、お一人でも多く、放射線治療などの影響による生殖不能がなくなる時代が来てほしいものです。
一時金補償、無いより良いのは確かです。が、320万円という額、令和6年までという期間限定、については、もう少し上乗せ配慮があっても良いのかなと感じます。いろいろ議論された結果なのでしょうけれど…
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