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和田仁

日本放射線腫瘍学会リーフレット公開:放射線治療による緩和ケア



 「放射線治療による緩和ケア QOL生活の質の向上のために」のポスターとリーフレットが日本放射線腫瘍学会ホームページに掲載されました。どなたでも無料でPDFファイルとしてダウンロードすることができます。


 ここに記載されている通り、『痛みをはじめとする身体症状の改善やQOL(生活の質)の向上を目的として行われる緩和的放射線治療。今ある症状だけでなく、今後起こりうる症状についての対応も含まれます。』

 これらのPDFファイルは、放射線治療を受けられる患者さんやご家族向けに、厚生労働科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業、がん治療における緩和的放射線治療の評価と普及啓発のための研究(茂松班会議)成果物として作成された書類です。

https://research-er.jp/projects/view/1090587


 リーフレットには、緩和的放射線治療が役に立つ代表的なケースとして、骨への転移による痛みを和らげる効果と、背骨の転移により起こる麻痺を改善することが挙げられています。もちろん、ここに掲載されている骨転移の痛みや背骨の転移により起こる麻痺(悪性脊髄圧迫症候群:Malignant Spinal Cord Compression, MSCC)だけでなく、昨年の院長ブログでも話題にした胃がんなど腫瘍からの出血など、様々ながんの症状の改善に緩和的放射線治療は大事な選択肢となります。

 緩和的放射線治療については、私も数年前の勤務医時代に書いていた以前のブログ「仮面放射線治療医の思いつき日記」でも時々テーマにしていました。


 がんにおける緊急放射線治療の対象として有名な悪性脊髄圧迫症候群(MSCC)については、飲み友達でもある広島市民病院の松浦先生がメディアなどへ積極的に普及啓蒙活動をなされています。

 松浦先生は昨年の4月28日(院長の誕生日)に、日経メディカルさんの私の視点で「がん患者の下肢の完全運動麻痺を救えるのは主治医とかかりつけ医」と題した、丁寧でわかりやすい記事も書かれています。


 ちなみに私も、悪性脊髄圧迫症候群(MSCC)について「仮面放射線治療医の思いつき日記」にまとめたことがありました。MSCCを連想しづらいAlways on a Friday(1)(2)というタイトルでしたが…

 私のブログに書いた内容で、松浦先生の記事にあえて私が強調したい文言を付け加えるとしたら「とにかく誰が早期発見をしてもいいのです。医者でも看護師さんでも理学療法士さんでもご家族でもご本人でも、誰かがMSCCを知っていて早急な対応さえできれば…」でしょうか。医者がMSCCを発見すれば良いのですが、看護師さんや理学療法士さんのほうが患者さんをしっかり観察していたりします。もちろん、ご家族もご本人もなんとなくおかしい症状であることはおよそ気づきます。誰がではなく、誰でもいいから、とにかく早くおかしいことに気づいて(画像検査などで)きちんと確認することが大事。時間との戦いなんですよね、MSCCって。


 MSCCに限らず、緩和的放射線治療の本格的な普及啓蒙の時代はこれからといっても良いかもしれません。各種がん学会とか緩和医療学会とか在宅医療学会とか、いろいろな学会との合同シンポジウムなども最近は多くなってきました。


 そして今回のポスターやリーフレットによる啓蒙活動では、治療と仕事・生活の両立という患者さんやご家族にとってはとても重要な部分にも焦点が当てられていることが、さらに注目されるところでしょうか。

 リーフレットには『治療回数は患者さんの状態に合わせて、1回から数回(多い場合には20回以上)であり、放射線治療は一般的に治療中の仕事との両立に適しています。就労・介護などとの両立についてご相談ください』と明記されています。


 私を含めた放射線腫瘍医自身も、がん患者さんたちの就労や介護支援についてさらに情報を得ることが大切な時代になっていくのでしょう。





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