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和田仁

粒子線治療のピットフォール(施設間格差)


 昨日、令和3年度第2回診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会がオンライン開催され、令和4年度診療報酬改定に向けた医療技術の評価についての報告がPDFで公開されました。

 議事次第の68ページに放射線治療関連の記載があり、陽子線治療と重粒子線治療の適応拡大については「一部の提案について評価すべき医学的な有用性が示されている」でした。この「一部」の具体的な病名ですが、「肝内胆管がん、大型の肝細胞がん、局所進行膵がん、局所進行子宮頸部腺がん、手術後に局所再発した大腸がんで、いずれも切除できないものに限る」とのこと。長い間、先進医療粒子線治療の対象だった疾患群の保険適応が4月から拡大されそうです。そして他の先進医療対象も引き続き継続審議とのこと。良かった良かった!


 そんななか、このような(やや水をさすような)ブログを以下に投稿してしまいました。でも、今後ますます治療対象が保険診療主体となり、先進医療や自由診療対象となりうる疾患群の施設間格差もますます広がりそうな気がするので、あえてこの時期としました。



 現在、日本の粒子線治療は全国統一治療方針というものがあり、全国の粒子線治療施設の共通プロトコールで照射線量が定められています。その一覧が日本放射線腫瘍学会ホームページで一般の方々にも公開されています。

 ただ、先進医療などの適応病態や放射線治療の設定など、医師であっても専門家でないとわかりにくい記載も少なからずあります。


 もし保険適応や先進医療に該当しない病態であっても、自由診療という選択肢も場合によってはあります。ただ、自由診療は粒子線治療だけでなく「その疾患に関する全ての診療行為が全額自費診療」となってしまうので、患者さんの金銭的負担はかなりのものになりますし、また医学的な有効性や安全性も不透明な点が(本質的な)問題となってきます。大病院であってもその診療科における偉い立場の先生が「うちでは自由診療を行いません」と制限をかけた場合は、患者さんが希望しても治療してもらえません。でも、別の施設では治療適応となる場合があったりします。


 以前の粒子線治療のピットフォールブログでも触れた「最終的には主治医の判断が決め手となる場合が少なくありません。厳格な医師では先進医療がダメとなるステージでも、緩い医師ではOKとなる場合があります」。これは保険診療や先進医療が対象とならない病態の方々に対する自由診療となると、さらに施設間や医師間の格差(温度差)が広がります。繰り返しになりますが、「約300万円+他の全診療費も全額自費」という高額治療なのに、そんなのおかしい!って文句を言いたくなるでしょうが、そんなバカな?と思われるでしょうが、決してまれなことではないんです。おそらくどの施設であっても...

 繰り返しになりますが、自由診療というのは診療行為の効果や安全性がはっきりわかっていないことばかりなので、標準治療に厳格な医学者や自己保身的な医者など、自由診療そのものを拒否をしたがる先生が多いのはやむを得ないことと承知しております。私だって「自由診療でも」とのご希望をお断りした方々は少なからずいらっしゃいます。中には、病院全体で自由診療の体制をとらない方針の施設もあると伺っています。


 自由診療だけでなく保険診療や先進医療を含めた更なる根本的な格差として、粒子線治療がある施設とない施設での温度差はかなりのものがあります。また、他の施設にかかっている患者さんが主治医に粒子線治療希望を相談された場合に「粒子線治療を受けたら私はもうあなたの診察はしませんから、うちの病院には戻ってこないように」と面と向かって突き放す主治医もたまにいらっしゃいます。これ、法律(医師法19条1項)違反になると思うのですが…


 粒子線治療施設がある県とない県とでも格差があります。南東北がん陽子線治療センターの調査で、福島県在住の方々の総数と福島以外の東北地方在住の方々の総数がほぼ同じ割合でした(ホームページより)。福島県よりお隣の宮城県の人口のほうが多い(さらに、残りの山形、岩手、秋田、青森の4県の人口総数のほうがもっと多い)にもかかわらず。さらに全体の割合でも東北地方が過半数を占めています。

 千葉のQST病院(元の放医研)さんなど他の粒子線治療施設でも同様に地元の県の症例数が過半数を占めていたと以前にデータを伺ったことがあります。



 担当医によって治療の選択肢が大きく変わる、運不運だけでは片づけられない問題ですよね。自分の身は自分で守る、知識と自己防衛は大事です。

 うちのくりにっくがお役にたちたい一つの大事なお仕事は、国内外の利用者さんと粒子線治療をしてくれそうな施設や先生との橋渡し役。どうぞご相談ご利用ください。

 


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