昨年、山形大医学部の櫻田香教授らが、山形県全域にわたり地域に密着し行ってきた疫学研究(山形県コホート研究)のデータ解析から、笑う頻度が全死亡および心血管疾患の独立したリスク因子であること、すなわち「笑う門には長寿来る」の可能性が示されたことを論文報告しました。山形大学医学部ホームページでも、記者会見を行った時の模様などがトピックス記事として公開されていますので、一部引用させていただきます。
近年、笑いの健康効果に関する報告が増加していますが、笑う頻度と全死亡リスクおよび心血管疾患発症リスクとの関係についての縦断研究はこれまでになく、この研究は、世界初の笑う頻度と寿命に関する縦断研究ということになるそうです。
山形県コホート研究は、いろいろな要因(項目)を調査開始時に確認し、これからどうなっていくのか時間の流れに沿って、健康状態の変化などを追跡して調べる前向き調査で、生活習慣病につながる体質と生活習慣の組み合わせを明らかにし、個人にあった健康増進・病気の予防法を提案する研究だそうです。
前向き調査とは、さあ調べるかという段階ですでに結果が出ている後ろ向き研究と違い、調べよう!と決めてから経過を見ていくため、多くの対象者や長い調査期間が必要で、労力や費用も膨大なのだそうです。すごく大変な研究ですが、データの結果の信頼度は高いです。山形大は私が在籍していた頃から多額の研究費を獲得して、この大規模研究を行っていました。
櫻田教授らの研究論文の概要を以下にご紹介します。山形県コホート研究に協力された17000人余りの40歳以上の一般住民を対象に、笑う頻度、既往歴、飲酒、喫煙、睡眠時間、運動量、ストレスなどについて質問票を用いて調査しました。「笑う頻度』の定義は、1週間に1回以上 (よく笑う)、月に1回以上かつ1週間に1回未満 (たまに笑う)、月に1回未満 (ほとんど笑わない)の3群に分けたそうです。
結果ですが、経過観察は中央値5.4年で、257名が死亡され、うち138名が心血管疾患発症だったとのこと。そして、笑う頻度が少ないのは、男性 • 喫煙者 • 飲酒者 • 運動しない人 • 一人暮らし、だったそうです。そして、ほとんど笑わない群では、よく&たまに笑う群に比べて有意に全死亡率も心血管疾患死亡率も高値で、全死亡率では2倍近くの差がありました(添付画像図:櫻田先生作成スライドより)。多変量解析でも「笑う頻度」が独立したリスク因子として抽出されました。
しかしまあ、よくぞ「笑い」をこの大規模疫学調査の項目に含めていたものです!先見の明あり、でしたね。このような面倒くさい自記入式アンケート調査で「笑う頻度」を数多くの項目候補からリストに選択していたな(たぶん山形という生真面目な人々がたくさん住む地域柄も良かったのでしょう)という驚きと、その結果でなんと生存率にも大きな差が出たという驚きと、しかもその報告が身近で元職場の山形大からだったという驚き。すばらしい研究論文報告だと思います。あと5年後くらいに、がん発症率について調査してもらいたいですね。こちらも大きな差が出るか!?
櫻田香教授は「山形県の方々のご協力で得られた貴重な結果ですので、皆さんに知っていただきたい。笑うことはお金もかかりませんので」と話し、会場の笑いを誘っていたそうです笑。櫻田先生は私が山形大学に在籍していた当時、脳外科医としてバリバリ第一線で脳腫瘍手術をたくさん担当されており、術後照射などで定期カンファレンスもさせていただいた、臨床医としてもとても優秀な先生です。現在は看護学科の教授として活躍され、一時期は私の娘もお世話になりました。その節はどうもありがとうございました。
3年ほど前ですが、大阪国際がんセンターと吉本興行などが協力し、笑いはがん医療にも効果があるのかという研究を行っていましたね。
その結果もすでに論文で報告されています。この報告では、生存率までのデータは(まだ?)出ていないものの、落語か漫才のお「笑い療法」ありなしを健康関連QOL(EORTC QLQ-C30)を利用した調査のランダム化比較試験で、痛みの改善や、認知機能の向上がみられたそうです。
また、付随研究で免疫能の検査も行っていたそうで、統計学的に有意ではなかったが(ここは大事)、がん細胞を攻撃するナチュラルキラー(NK)細胞が1.3倍に増加した例もあったとのことです。
吉本絡みの研究は全国メディアでもたまに報道されていたから、ご存じの方は少なくないのではないでしょうか?研究の信頼度的には山形大のほうが明らかに勝っていると私は思うのですが、多くの方々へ情報を伝えるにはメディア戦略って大事なんでしょうね〜
笑いは身体やがんに良さそうと、 (インド発祥の?)笑いヨガなどを実践、推奨されている方々も結構いらっしゃって、私も何名か(SNS含めた)お友達がいます。
笑いヨガ、ますます普及しそうですね!笑笑
コメント